新型肺炎 楽天、パソナなど 手探りのテレワーク
中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の広がりを受け、自宅などでの遠隔勤務「テレワーク」を活用する企業が増えてきた。感染の急激な拡大や重症化のリスクは限られるとみられているものの、ワクチンや特効薬がないなか、企業は手探りで社員の感染予防に動いている。
目立つのがテレワークとの親和性が高いIT(情報技術)企業だ。
ヤフーは新型肺炎が発生した中国の武漢市に渡航歴のある人と接触したり、中国から帰国したりした社員に2週間の在宅勤務を義務付けた。30日付で社内に通達した。
同社はもともと月に5日間、在宅などでのテレワークを推奨してきた。27日時点では中国への渡航禁止を通知していただけだったが、日本国内でも感染が確認されたため、対応を強化した。
楽天も中国からの帰国者に2週間の在宅勤務を指示した。ただ北京市や大連市の開発拠点に日本人駐在社員はほとんどおらず、人数は限られる。
あわせて楽天は日本で感染が拡大した場合、国内の全社員を在宅勤務とする検討も始めた。在宅勤務に切り替える目安となる感染者数などの詳細はまだ決まっていないが、楽天は連結ベースで2万人弱の従業員のうち約7割が国内勤務だ。実行すれば、国内有数の規模のテレワークとなる。
GMOインターネットは27日から、国内従業員の9割の約4000人に在宅勤務させている。2週間がメドだ。
2011年の東日本大震災以降、全従業員が年1回、在宅勤務を訓練。ほとんどの社員が経験者とあって、ネットや電話を活用して混乱なく仕事に臨む。ただ来客や郵便物の受け取りで出社する社員もいるという。
IT企業だけではない。JXTGホールディングスは出張、旅行を問わず中国から帰国した従業員に自宅でのテレワークを義務付けた。
人材大手のパソナグループは31日、契約社員を含む全社員にテレワークの積極活用を呼びかけた。50歳以上の中高年、妊娠中の女性、持病を持つ社員らに特に勧めている。
これまでも全社員が利用できたが「制度が認知されておらず利用率は低かった」という。同時に時差出勤も勧めている。営業など終業時間の遅い部署が対象だったが、全社員が利用できるようにした。
主力の人材派遣事業では、派遣先企業が在宅勤務を導入している場合、パソナからの派遣社員にも在宅勤務を認めるよう働きかける。
日本たばこ産業(JT)は27日付で、日本国内の全社員約7500人にテレワークを積極的に活用するよう通知を出した。原則週2日までという平時の制限をなくした。
日本企業のテレワーク導入率は上昇傾向にあるものの、約2割にとどまっている。今回の新型肺炎が図らずもテレワーク普及の後押しにつながるとの見方もある。