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2019年9月の東京五輪マラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」で選手が履いていた厚底シューズ(右)と一般的なレースシューズ(左)=川崎桂吾撮影

現在流通の厚底シューズ、東京五輪では使用可 世界陸連

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 陸上長距離界で驚異的な好記録の一因として話題を呼び、規制の有無が議論されていた米スポーツ用品大手ナイキの厚底シューズについて、ワールドアスレチックス(世界陸連)は31日、現在市場に流通しているものは引き続き使用できるとの見解を明らかにした。今夏の東京五輪でも利用できることになる。

 世界陸連によると、選手や科学、法律の専門家らによる検証グループが調査を進め、好記録を演出するナイキの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」シリーズなどを調査してきた。

 長距離走では底が薄くて軽い靴が適しているとされてきたが、ナイキの厚底シューズは「常識」を覆した。反発力の強いカーボンファイバー(炭素繊維)のプレートを宇宙産業用の軽くてクッション性のある素材で挟むことで、靴底のクッション性と反発力を両立させた。

 一方、世界陸連は競技規則第143条で、シューズについて「使用者に不公平となる助力や利益を与えるようなものであってはならない」と規定。走り高跳びと走り幅跳びの靴底の厚さは13ミリ以内、走り高跳びのかかとは19ミリ以内と定めているが、跳躍種目以外は「靴底とかかとはどのような厚さでも差し支えない」とし、靴底の厚さや反発力について明確な基準はなかった。このため、厚底シューズの反発力が「助力」に当たるかどうかが論議を呼んできた。

 厚底シューズをめぐっては、2016年リオデジャネイロ五輪で試作品を履いた選手が男女マラソンで計5個のメダルを獲得し、国内外のトップ選手に普及した。19年9月の東京五輪マラソン代表選考会では、男子1位の中村匠吾(富士通)ら代表切符を手にした男女計4選手のうち、3選手が厚底シューズを履いていた。

 男子マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(ケニア)も愛用しており、19年10月には非公認レースで史上初の「2時間切り」を達成。正月の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)と箱根駅伝では、優勝チームや区間賞獲得者の大半を含む8割以上の選手が使用するなど陸上界を席巻している。国内の陸上関係者の間では「マラソンでは記録が2分向上する」という見方が広がっている。【小林悠太】