英国、EUを離脱へ…欧州統合は歴史的な転換点
【ロンドン=石崎伸生、ブリュッセル=畠山朋子】英国は31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、欧州連合(EU)から離脱する。2度の大戦で荒廃した欧州の恒久平和の実現を理念に掲げ、拡大と深化を続けてきた欧州統合は、EUから加盟国が初めて抜ける事態となり、歴史的な転換点を迎える。
ジョンソン英首相は31日、中部サンダーランドで閣議を開く。サンダーランドには日産自動車の工場がある。離脱日に合わせて主要産業の拠点都市で閣議を開くことで、懸念される地域経済や雇用への悪影響を防ぐ政府の決意を示す。
欧州統合の歩みは、1952年に創設された欧州石炭鉄鋼共同体から始まった。EUの執行機関・欧州委員会のフォンデアライエン委員長は31日、ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)、サッソリ欧州議会議長とともに記者会見し、「英国はEUの隣人であり続ける。英国とEUには安全保障や経済関係などで共通の課題があり、将来関係において最大限可能な合意を達成し、緊密に協力できることを世界に証明したい」と語った。英国の離脱により、EU加盟国は27となる。
英国では31日、ロンドンなど各地で離脱に賛成、反対のグループがそれぞれ集会を開くなど、英国内はなお離脱への賛否を巡り分裂している。
英国のEU離脱は当初、2019年3月29日の予定だった。離脱を巡る英国の政治混乱のため、離脱日は3度延期された。離脱直後から英国とEUは協定に基づき、今年末まで現在の関係を変えない移行期間に入る。市民生活や企業活動の混乱は最小限にとどまる見通しだ。
移行期間の終了までに、英国とEUは自由貿易協定(FTA)の締結や漁業権、安全保障など将来の関係について合意を目指すことになるが、交渉は難航が予想される。交渉がまとまらない場合、移行期間を最長で22年末まで延長することができる。延長するかどうかは6月末までに決めることになっている。
英国がEUから完全に離脱すれば人、モノ、資本、サービスが自由に移動できるEUの単一市場と、関税なしで貿易できる関税同盟の恩恵が受けられなくなる。
英国は、EU加盟国の中でドイツに次ぐ経済規模だった。英国が抜けることで、米国に匹敵していた経済圏としてのEUの規模は縮小する。今後の加盟国拡大などを巡り、EUの結束の維持が難しくなるとの指摘も出ている。