米、中国渡航を「禁止」に引き上げ…緊急事態宣言で各国対応分かれる

 【ワシントン=船越翔、北京=竹内誠一郎】新型コロナウイルスによる肺炎の流行拡大について、世界保健機関(WHO)が「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言したのを受け、米国務省は1月30日、中国への渡航情報を最も高い「禁止」に引き上げた。渡航情報の警戒レベルは4段階あり、これまで禁止は武漢市がある湖北省に限り、中国の他の地域は2番目に高い「再検討」だった。

 WHOは緊急事態宣言の中で、「渡航や貿易の制限は推奨しない」としているが、各国が自主判断で渡航の制限に踏み切る動きが相次いでいる。

 オーストラリア政府は28日から湖北省への渡航禁止と他の中国全土への渡航の再検討を促す警告を公表している。韓国外交省は23日に武漢市の渡航情報を4段階で上から3番目の「自粛」とし、25日には湖北省を2番目の「退去」に引き上げた。28日には他の中国全土への渡航を自粛とした。ロシアも中国国境の検問所を閉鎖した。

 中国の張軍国連大使は30日、米ニューヨークの国連本部で記者団に対し、「逆効果となりかねない過剰反応を避け、各国は責任ある行動を取るべきだ」と述べ、渡航制限などの動きが拡大していることをけん制した。

 緊急事態宣言を受け、中国の国家衛生健康委員会と華春瑩(フアチュンイン)外務省報道局長は31日午前、相次いで声明と談話を出し、「我々はすでに最も厳しい防疫措置を取っている」と述べ、WHOと協調して対策にあたる立場を示した。いずれも、宣言に対する中国政府としての評価には一切言及しなかった。

 WHOの対応が中国の貿易や渡航の制限に及べば、減速傾向にある中国経済にさらなる打撃を与えかねない。ジュネーブでの記者会見でWHOのテドロス事務局長は中国の対応を称賛するなど配慮が際立った。