KDDIの第3四半期決算は増収増益、4Qはエンゲージメント強化施策メインに

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 KDDIは、2020年3月期第3四半期の決算を発表した。連結での売上高は3兆9026億円。通期業績予想に対する進捗率は75%。連結営業売上高については8439億円で進捗率は82.7%。どちらも前年同期に比べ向上した。通期予想に対しては、高進捗であり「今後も持続的成長に向けて準備を強化していく」とした。また、持続的成長と株主還元強化の推進により配当予想を5円プラスする。

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高橋誠氏

堅調な成長を維持

 連結営業利益増の背景にはライフデザイン領域とビジネスセグメントが業績の牽引役となったことがある。通期では端末販売コストが増加したものの、10月以降の事業法改正で大幅な縮小傾向にあるとした。

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 また、スマートフォン販売台数は第2四半期までは堅調な推移を見せており、前年同期比超えを記録したものの、今期は170万台と前年同期比21万台減となった。

auスマートフォン販売台数
FY2019.3FY2020.3
1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q
161万台173万台191万台210万台165万台207万台170万台

 上期では減益決算だったが、ソリューションやエネルギー事業などの増収により下期に入って増益決算に転じた。通期予想に対するセグメント別進捗率はライフデザイン領域で81%、ビジネスセグメントで90%で、第4四半期はエンゲージメント強化に向けた施策に投資し、持続的な成長のための基盤づくりをしていくという。

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 au解約率は、0.61%で前年同期比0.11ポイント改善した。10月以降は市場の流動性が大きく低下したこともあり、大幅な改善となった。モバイルID数は前年同期比プラス29万増の2709万IDとなった。1月26日にUQモバイルが200万契約を突破しており、今後もグループ全体でのID数アップに務めるとした。

 総合ARPA(1アカウントあたりの収入)は前年同期比4.2%増の7770円で、総合ARPA収入は前年同期比3.3%増の5671億円だった。auでんきARPAや付加価値ARPAなどのライフデザイン領域が総合ARPAに貢献した。

ローソンやポンタでエンゲージメント強化へ

 ローソンおよびポンタとの提携により「新しい消費体験を目指して多くのユーザーがファンになってもらえる経済圏拡大を目指す」という。5月以降、au WALLET ポイントとPontaの統合により1億超の会員基盤が誕生し、2000億超のポイント付与額を活かし、扱いやすく貯まりやすいポイントにすることでau PAYの会員数の拡大を目指す。

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 au PAYはNPS(Net Promoter Score)や付加価値ARPAが高く、ポンタとの連携によりさらなる会員数拡大を見込み、エンゲージメントとARPAの向上を目指すという。

 「AUGMENTEDコンビニ」として、ローソン店舗において5GやAI、ビッグデータなどの先端テクノロジーを用いた新たな消費体験で食品ロス、健康維持など社会課題を解決していくとした。

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 また、災害などを見据えてネットワークの強靭化も行っており、基幹伝送路に迂回路をつくることで、万一の災害時でも安定した通信を提供する。2020年3月竣工予定の沖縄~九州間を以て日本全域で3ルート化がなされることになる。

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5G時代のユーザーに対するアピール

 5G時代における、他社との差別化について高橋氏は「5Gで何が便利になるのかはユーザーにしっかり説明しなくてはいけない。コンテンツも形を変えてリッチになっていくと思うので、コンテンツプロバイダーとどう表現していくかを話し合っていきたい」とした。

今後のポイント戦略は

 「ペイメントサービスは、ポイントの発行が連携していないと生き残れないと感じている」と高橋氏。どこの会社を見ても加盟店開拓費用が重くのしかかっており、これを生き残っていこうとするとユーザーのモバイル口座にちゃんとお金が入ってくる仕組みがないといけないという。

 「通信会社はいままでのポイントの仕組みがあるので連携しておくと強い」。ポイントとコマースの循環を作れればユーザーのエンゲージメントも上がることから、引き続き取り組んでいきたいとした。

NTTグループの共同調達について

 1月27日、KDDIほか21社は、総務大臣に対しNTTグループの共同調達に係る意見書を提出した。2019年12月17日、総務省の情報通信審議会において公正競争を阻害しない範囲で例外的にNTTグループによる共同調達を認める方向性が示される中、どこまでの範囲が「公正競争を阻害しないのか」など具体的な根拠が欠けたまま進められた議論を問題視したもの。

 これに対して高橋社長は「非常に大きなNTTグループが共同調達をした場合、公正競争上の懸念がある。十分な議論もせず答申で方向性が出された。おそらく今後は公開での議論が進められていくのではないかと思う、期待したい」とした。

 高橋氏は共同調達の問題点として「NTTグループ内で設備仕様の共通化が図られると(他社は)不公正な接続料金の懸念もある」と語り、この先の5G時代に強靭なNTTグループで共同調達などされると、コスト競争力などで厳しいなどの点において公正さが欠ける旨を主張した。