インターネット上の海賊版対策の今後の課題
by 藤末健三この通常国会でインターネット上の海賊版対策のため著作権法の改正が行われることとなるが、未だ以下のような課題が残っている。
(1)リーチサイト
【表現の自由とのバランス】
○ インターネット上でリンクを張ることは憲法で保障された表現の自由に含まれる行為である。リンクを伴う形で自己の意見を述べる表現行為は、広くインターネットユーザーの間で定着している一般的な表現手法であり、規制を強化しすぎると、表現の自由に対して萎縮効果を招くおそれがある。
【実効性】
○ 今般のリーチサイト対策により、リーチサイトへの差止請求等が可能になったとしても、ブログ等は無料で簡単に立ち上げられるため、削除のいたちごっこになるだけで、海賊版対策の実効性は低いのではないかとの指摘がある。
○ 今般のリーチサイト対策は、あくまで国内法の整備であるため、国内法の及ばないリーチサイトを経由した海賊版サイトへのアクセスや、国外の海賊版サイトに直接アクセスする場合の対応の必要性は依然として存在する。
(2)侵害コンテンツのダウンロード違法化
【ダウンロードのみを規制することの是非】
○ 「漫画村」等、近年問題とされている主要な海賊版サイトは、ダウンロードを伴わないストリーミング方式を採用しているため、ダウンロードを違法化したとしても、直接の対策にはならないとの指摘がある。
【「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」の要件の取扱い】
○ 本要件の追加により海賊版対策の実効性が失われることを懸念する意見がある一方で、海賊版対策とは無関係の行為(権利者不明著作物の利用等)についても規制が及び、ユーザー側への萎縮効果をもたらしかねないと懸念する意見もあることから、立法政策においてどのような判断がなされるか、注視される。
【国民の不安・懸念の払拭】
○ 文化庁が実施したパブリックコメントの結果によると、個人から提出された意見のうち、文化庁のいう「基本的な考え方」(「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請を両立させた形で、侵害コンテンツのダウンロード違法化を行うこと)に否定的な意見が約9割(計4,274件中、反対・どちらかといえば反対と思われる意見が3,792件)、要件にかかわらず侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではないとの意見が半数以上(計1,013件中、578件)を占めていた。国民の不安・懸念の声が多く上がる中、あえて侵害コンテンツのダウンロード違法化を進める必要性等について、丁寧な説明が求められる。
☆☆☆参考となる資料(WEB情報)☆☆☆
· 侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(令2.1.16)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shingaikontentsu/pdf/91997502_01.pdf
· 侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shingaikontentsu/index.html
· 文化審議会著作権分科会報告書(平31.2)
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/r1390054_02.pdf
侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会(第1回)(令元.11.27)配付資料
「文化庁当初案の概要・条文等について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shingaikontentsu/01/pdf/r1422992_12.pdf