海洋放出が「より確実に実施可能」
経産小委が報告書を大筋了承
経済産業省は31日、東京電力福島第1原子力発電所で発生する汚染水を処理した水に関する小委員会(委員長、山本一良名古屋大学名誉教授)に報告書案の修正版を示し、大筋で了承された。海洋放出と蒸発させる水蒸気放出が「現実的な選択肢」とした。特に海洋放出は国内の原発で実績があるため「より確実に処分できる」と明記した。今後、政府が地元自治体などの意見を聞き、方法を決める。
小委では、委員から表現の一部について修正を求める意見が出たため、山本委員長にとりまとめを一任した。
炉心溶融(メルトダウン)事故を起こした福島第1原発では放射性物質に汚染された水が1日170トン(18年度平均)発生している。東電は専用装置で主要な放射性物質を取り除いた処理水を敷地内のタンクで保管してきた。
2019年12月時点で118万トンの処理水がたまっている。東電は20年末までに計137万トン分のタンクを確保するが、「22年夏ごろに満杯になる」と試算している。
小委では約3年にわたって風評被害などの社会的な影響を含めて処分方法を議論してきた。事務局の経産省が昨年12月に示した当初案で地下埋設などの5つの処分方法から、薄めて海に流す海洋放出と水蒸気放出という国内外で前例のある方法に絞り込んだ。
前回会合で出た委員の意見を踏まえて案を修正した。海洋放出と水蒸気放出のメリット、デメリットを詳細に明記した。国内での実績、設備の取り扱いやすさなどを海洋放出のメリットとしてあげた。
風評被害はどちらの方法でも発生するものの、水蒸気放出は「海洋放出より幅広い産業に影響が生じうる」と指摘した。海洋放出が優位と読める書き方だが、処分方法は「政府が幅広い関係者の意見を丁寧に聞きながら、責任と決意を持って決定することを期待する」との記載にとどめた。
政府が今後、地元自治体、漁業関係者などの意見を聞いて、処分方法を決定する見通しだが、メドは立っていない。海洋放出には地元の漁業関係者を中心に風評被害への懸念が根強い。
処理水には取り除くのが難しい放射性物質トリチウムを含む。トリチウムを含む水は基準値以下に薄めれば海に流すことが国際的に認められている。