「事前放流増やせば人命失われなかった」西日本豪雨でダム放流 愛媛の犠牲者遺族ら国など提訴
by 毎日新聞西日本豪雨(2018年7月)の際、国の不適切なダム操作が愛媛県大洲、西予両市で肱川(ひじかわ)の浸水被害を拡大させたなどとして、犠牲者の遺族や被災住民ら8人が31日、国と両市を相手取り、国家賠償法に基づく約8600万円の損害賠償を求めて松山地裁に提訴した。
原告は自宅が浸水して亡くなった西予市の大森仲男さん(当時82歳)と妻勝子さん(同74歳)の娘2人と、大洲市で浸水被害に遭った6人。訴状によると、国土交通省四国地方整備局は豪雨による雨水の流入量の増加が予想できたのに、野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)に十分な空き容量を確保していなかったと指摘。「事前放流を増やしていれば被害は2割程度にとどまり、人命が失われることはなかった」と主張している。また両市についても住民への周知が不十分だったなどとしている。
県庁で記者会見した奥島直道弁護士は「何もしなければ(当時の)ダム操作が正しいことになってしまう。誰が考えてもおかしいということで立ち上がった」と強調。「天災ではなく人災。真実を明らかにしないと亡くなった人たちが浮かばれない」と訴えた。
西日本豪雨では、四国地整が両ダムで流入量とほぼ同量を緊急放流する「異常洪水時防災操作」を実施。安全とされる基準の6倍の量が放流されて肱川が氾濫し、両市で8人が死亡、数千戸が浸水した。西予市で避難指示が出たのは、緊急放流の約1時間前、大洲市では5分前だった。【中川祐一】