香港デモ長期化へ 抗議活動半年、習氏前面が裏目に

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手のひらを広げて「五大要求」を訴える人たち。香港政府との対立は長期戦の様相を強めている(8日、香港)=AP

【香港=木原雄士、北京=高橋哲史】香港の抗議活動は9日、6月の100万人デモから半年の節目を迎えた。8日のデモは主催者発表で80万人が参加するなど抗議が収まる兆しはない。デモ参加者は普通選挙の導入など「五大要求」の旗を降ろさず、中国・香港政府が市民の要求を突っぱねる対立の構図が続く。互いに譲歩が難しく、長期戦の様相を強めている。

「政府は市民の要求を無視して、警察のひどい振る舞いを助長している。香港人は負けない」。8日、香港島のデモ行進に参加した会社員の唐さん(25)はこう話した。長引くデモで香港経済は7~9月期に約10年ぶりにマイナス成長に転じ、経済や市民生活に影響が広がっている。

香港政府によると、半年で900を超える抗議活動があり、デモに絡む逮捕者は6千人を超えた。デモ隊との衝突で1万6千発の催涙弾を使うなど、警察の強硬策は市民の反発を呼んだ。

11月の区議会議員選挙で民主派が大勝した後、香港警察はデモを許可するなど姿勢の変化がうかがえる。8日のデモでは一部でデモ参加者の破壊行動がみられたが、警官とデモ隊との間で大きな衝突はなかった。

もっとも、中国では習近平(シー・ジンピン)国家主席が香港問題で「秩序の回復」を自ら指示する異例の扱いを続ける。最高指導者の命令は絶対で、中国に譲歩の余地はほとんどない。

中国の趙克志公安相は6日、北京で香港警察トップの鄧炳強警務処長と面会した。「習主席は11月14日の重要講話で香港の暴力と混乱を止め、秩序を回復するための方向を明確に示した」。趙氏はこう指摘したうえで、香港の過激な抗議活動を徹底的に取り締まるよう改めて指示した。

今回、習氏が陣頭に立ったのは、香港の過激な抗議活動は力で押さえ込めるとの自信があったからにちがいない。ただ、中国側の強硬な姿勢は香港市民の怒りに火を付ける結果を招いた。

香港政府は平和的なデモを認める一方で、過激な抗議を厳しく取り締まる硬軟両様で臨む構えとみられる。デモ参加者は区議選の圧勝や米国の香港人権・民主主義法の成立で勢いづいている。混乱が長引くのを避けたい親中派の経済界からも「政治的に解決するしかないのではないか」として、香港政府の対応に期待する声も出始めている。