2億4000万画素でマクロ撮影に挑戦! 「α7R IV」は顕微鏡の領域に踏み込めるか

マクロ撮影+2億4000万画素で“小さな世界”を見ていこう。塩こしょうや七味唐辛子など、身の回りにある細かなものを撮影してみた。

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 ソニーのフルサイズミラーレス「α7R IV」には、6100万画素の写真を複数枚合成することで2億4000万画素の画像を生成できる「ピクセルシフトマルチ撮影」機能がある。必ず合成がうまくいくわけではないのだが、うまくいった写真の解像度は「素晴らしい」の一言に尽きる。

 以前に核融合実験施設でのピクセルシフトマルチ撮影テストをレポートした。被写体が静止していることが前提の機能なので実験器はちょうどいい被写体だと考えたのだが、思いの外エラーの発生率が高かった。光源の明滅などで、合成に用いる写真の明るさが微妙に変わってしまったことなどが原因と思われる。

(関連記事:2億4000万画素の衝撃! ソニー「α7R IV」で最先端核融合炉を激写した結果

 そこで今回はより安定した環境を用意しつつ、マクロ撮影で2億4000万画素の“小さな世界”を見ていきたい。マクロ+2億4000万画素で顕微鏡のような世界が見えるのではないかという実験だ。

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主に「LAOWA 25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACRO」を使用してテストしてみた。このレンズ、お値段の割にイイ感じの写りをする

 おさらい。ピクセルシフトマルチ撮影は、手ブレ補正機能を利用してセンサーを0.5ピクセルもしくは1ピクセルずつずらして撮影し、専用アプリ「Imaging Edge」で1枚の合成画像を作成する。

 合成する枚数は4枚か16枚から選べ、16枚を1枚にした場合には2億4000万画素のJPEG画像が生成される。手ブレ補正機能がオフになるため、三脚などに固定しておく必要はある。画質的なメリットは、単純にディティールに強くなる他、ハイライトやシャドー部の階調が豊かになる、などが挙げられる。

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1枚でも6100万画素はあるので十分な解像度ではある。仮に合成に失敗してしまっても、1枚の写真としては利用できる。写真は塩こしょう(下記の別カット) クリックで拡大表示(32MB

 ファイルサイズはRAW(非圧縮)で123MB前後×16枚。ピクセルシフトマルチ撮影で合成された際に生成される専用のARQファイルは1.96GB前後、画像処理用にTIFF(16bit)で出力すると1.45GB前後。Photoshopを使用して品質100のJPEG出力で286MB前後。そのため、JPEG出力までの一式を残しておこうとすると、ストレージ容量はモリモリと減っていく。とにかく、デカい。

 というわけで、今回は日常生活で遭遇する小さなものを何点か撮影してみた。掲載しているものは、データ的にエラーが少なかった例のみ。先に記しておくと、安定した光源であっても失敗する場合があると分かった。比較的安定した光源を提供してくれる撮影用のLEDなら問題ないだろうと考えていたのだが。

 外部的な可能性としては微振動くらいしかないのだが、この点もスマートフォン向けアプリ「phyphox」で振動が検出できなくなったことをチェックした上での撮影であり、正直なところエラーが出る要素がもう謎である(カメラのソフトウェアやハードウェアに由来するのか、それとも光の回折性などが関わるのか……)。念のため、モノブロックストロボでもテストしてみたが、それでもエラーを確認している。

 塩こしょうから見ていこう。レンズの「LAOWA 25mm F2.8 2.5-5X ULTRA MACRO」は辛うじて6100万画素の解像度に耐えているようだが、なにせこしょうが小さい。以下のピクセルシフトマルチ撮影のデータは原寸大の画像を9分割にして掲載している(1枚のファイルサイズが大きすぎるため)。拡大画像1枚当たり約40MBあるので、スマートフォンの場合はWi-Fi環境下であるのを確認した上でチェックしてほしい。

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塩こしょう(サムネイル) 透明な立方体が塩で、茶色で細かい粒がこしょう 以下に原寸大画像を9分割で掲載
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9分割した2億4000万画素の画像 それぞれクリックで拡大表示(1枚約40MB
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撮影状況は写真の通り。写真では大きな粒に感じるが、実際の大きさはこの程度

 次はバウムクーヘンだ。しましま模様をどアップにしてみたら楽しいだろうと思ったのだが、拡大してみると意外と滑らかに模様の色が変わっていくのだなと気付いた。バウムクーヘンの中がこんな構造をしているとは、撮影するまで知らなかった。何げなく食べているものの形を知るのは意外に面白い。

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バウムクーヘン(サムネイル)
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9分割した2億4000万画素の画像 それぞれクリックで拡大表示
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撮影風景

 七味唐辛子はどうだろう? 主成分は唐辛子だが、複数の素材が混ざっている。下記写真を見てみると、唐辛子が意外と大きく、それ以上に黒ゴマがデカく写った。また山椒と思われる粒がかなり小さく、拡大してみないと存在が分かりにくいものというのも分かった。

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七味唐辛子(サムネイル) かぼちゃの種のように思える大きな粒は黒ゴマだ
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9分割した2億4000万画素の画像 それぞれクリックで拡大表示
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撮影の様子

 追試として晴天下+無風状態(体感的に)、つまり屋外の安定した環境でテストもしてみたところ、3トライしてみて1ケースのみエラーのないデータを得られた。上述したようにエラーが生じる要素がもう分からないので、「これなら大丈夫」と思っても3ショット程度は余分に撮っておくと保険になりそうだ。

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濡れた落ち葉(サムネイル) 中央部にピンを合わせている。この写真のみ、レンズは「MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5」を使用した
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9分割した2億4000万画素の画像 それぞれクリックで拡大表示

 身近かつ小さいモノで2億4000万画素の描写を再チェックしようという企画だったのだが、気が付くとエラーが発生する条件を探るようになっていた。日光を明かりとする場合でもエラーを確認しているため、屋外でも屋内でも、エラーのない(もしくは少ない)合成写真を作るのはそう簡単ではないようだ。

 ピクセルシフトマルチ撮影とマクロレンズを組み合わせると顕微鏡のように細かい世界を撮影できるのではないかという問いについては、「倍率10〜20x程度の実体顕微鏡レベルにはなるが、より細かな構造までは見えない」というのが答えになる。初めに紹介したように、ハイライトやシャドー部に注目すると1枚の写真に比べて16枚合成の写真の方が階調がわずかに優れている様子が分かる。しかし今回の場合、解像に関してはピクセルシフトマルチ撮影自体よりもレンズ性能の方が効いていそうで、16枚合成の恩恵はそこまで感じられなかった。

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バウムクーヘンでの比較。左がピクセルシフトマルチ撮影の中心データで、右が合成前の1枚から切り出したデータ

 ピクセルシフトマルチ撮影を使うなら、保険のために何ショットか撮影しておくか、その場でハイスペックなノートPCに接続し、テザー撮影で逐次チェックを前提とした方がいい。カーレース撮影など、ジャンルによってはそろそろ冬眠という人もいるはずだ。α7R IVユーザーなら冬期の課題として、ピクセルシフトマルチ撮影と対話してみてはどうだろう? 光源だけでなく、三脚、雲台、制振など検討項目がより広がってしまうかもしれないが。