【球界ここだけの話(1813)】健大高崎、群馬3位からの快進撃に191センチ右腕・橋本拳あり
2019年の明治神宮大会高校の部は、中京大中京高(愛知)の優勝で幕を閉じた。今大会は県大会3位からの出場チームが目立った。そんな中、高崎健康福祉大高崎高(群馬)は群馬3位から準優勝に輝いた。県大会3位からの下克上の原動力となったのが、背番号10の橋本拳汰投手(2年)の台頭だ。
191センチ、85キロの体から角度のある最速142キロの直球を武器に力で押していく投球スタイルが魅力の本格派右腕。
中学時代の三重・桑員ボーイズでは、190センチの体格から130キロ中盤の直球誇り、日本代表「NOMOジャパン」に選出されるなど“東海のダルビッシュ”と呼ばれていた逸材。多くの強豪校からの誘いもあったが、「甲子園に一番近いと思った」と高崎健康福祉大高崎に進学を決めた。1年春からベンチ入りし、将来のエース候補として期待をされていた。
だが、ここまでの道のりは決して順調ではなかった。1年冬に肩や腕にしびれが生じる胸郭出口症候群を発症し、手術を受けた。それからは4カ月近く野球のできない日々が続き、「みんながレベルが上がっていくのを見ていて焦っていた」ともどかしい毎日を過ごしていた。
そんな逆境でも中学時代に日の丸を背負った右腕は、自分と向き合った。球速を上げることを目標に掲げ、徹底的に下半身強化と走り込みを行った。その成果もあり、球速は入学時から10キロ近く上がった。
けがを乗り越えて迎えた秋の大会。関東大会決勝では公式戦初先発を任され、山梨学院(山梨)打線を6安打完封でチームの初優勝に貢献した。青柳博文監督も「橋本が出てきてくれたのはうれしい」と笑顔を見せていた。
関東大会で大器の片鱗(へんりん)を見せつけた橋本拳は、関東大会決勝に続き、神宮大会決勝という大事な試合の先発を任されるまでに成長を遂げた。結果的に中京大中京打線を抑えることができず、6回4失点で降板。チームを日本一へは導けなかったが、エース左腕の下慎之介投手(2年)との2枚看板が確立され、来春に向けてチームの大きな収穫となった。
「今大会はすごくいい経験になった。でも自分の力はまだまだ。冬の間で課題を克服していきたい」と橋本拳。中学時代、“東海のダルビッシュ”として名をとどろかせていた191センチ右腕。冬でさらにレベルアップし、来春には“群馬のダルビッシュ”として全国にその名をとどろかせる。(樋口航)