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胸腺のイメージ図

死亡男児に恒常的に虐待か 胸腺萎縮 他の事件とも共通 福岡・エアガン傷害

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 福岡県田川市で1歳4カ月の男児が肺炎で死亡し、両親が保護責任者遺棄致死容疑で再逮捕された事件で、男児の遺体に、虐待を受けた子供たちにしばしば見られる「胸腺(きょうせん)」の顕著な萎縮が確認されていたことが、関係者への取材で明らかになった。胸腺は免疫機能を担う臓器で、強いストレスを恒常的に受けたり栄養が不足したりすると縮むとされる。県警は虐待を裏付ける重要な証拠になる可能性もあるとみて調べる。

 父親で同市伊加利(いかり)の土木業、常慶(じょうけい)雅則(24)と母親で無職の藍(24)の両容疑者は、重度の低栄養状態などで衰弱していた三男の唯雅(ゆいが)ちゃんを医療機関で受診させず、昨年12月1日に肺炎により死亡させた疑いが持たれている。

 県警などによると、唯雅ちゃんの死亡時の体重は生後2~5カ月の乳児と同程度の約6キロしかなく、全身にはエアガンのBB弾で撃たれたとみられるあざが多数あった。さらに、司法解剖の結果、亡くなる約3カ月前の昨年9月上旬以降にできたとみられる複数の骨折の痕が見つかったほか、胸腺が顕著に縮んでいることも確認された。

 胸腺は胸骨の後ろ、心臓の上にある臓器で、萎縮すると感染症などへの免疫機能が低下するとされる。虐待で亡くなった乳幼児や児童の多くに胸腺の萎縮が確認されており、2018年3月に死亡した東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)もその一人だった。埼玉県狭山市で16年1月、実母から冷水をかけられ、浴室に放置されるなどして死亡した3歳の女児の場合は、通常10~20グラムある胸腺が1~2グラムに縮んでいたことが公判で明らかにされた。

 両容疑者は暴行や育児放棄(ネグレクト)などの虐待を否認しているとされるが、県警は唯雅ちゃんが恒常的に暴行を受け、十分な食事も与えられずに衰弱して死に至った可能性があるとみて追及する。【柿崎誠、浅野孝仁、比嘉洋】