石木ダム訴訟 1審を支持 取り消し求めた住民らの訴え棄却 福岡高裁
by 毎日新聞長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、「国の判断に裁量の逸脱など違法はない」として1審・長崎地裁判決を支持し、住民らの控訴を棄却した。住民側は上告する方針。
石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的に建設が計画され1975年に国が事業採択。2013年に国が土地収用法に基づき事業認定した。水没予定地の住民らが提訴し、「(人口減の中で)市の水需要予測は過大で、治水面も河川改修などで対応できる」などと主張していた。
判決は、生活用水や工業用水などで需要が増え、24年度に1日4万トンが不足するとした市の予測(12年度算出)について、市民1人の使用水量を全国平均(09年度)より低く設定しているなどと指摘し「明らかに不合理な点があるとはいえない」とした。県の洪水想定についても国の基準などに従っているとし、石木ダムを必要とした判断を妥当とした。
また、移転が必要となる住宅の代替宅地が造成され、地域コミュニティーを一定程度再現することも不可能ではないとし「ダム建設の利益より、失われる利益が大きいとはいえない」と判断した。【宗岡敬介】
原告怒りあらわに「ダムは必要ない」
1審に続く敗訴に、原告らは怒りをあらわにした。
原告団は判決後に記者会見。水没予定地の住民で原告代表の岩下和雄さん(72)は「佐世保市の水需要予測は(算出のたびに)大幅に変わっていて信用できない。ダムは必要ないと確信している」と訴えた。水没予定地は今月18日の明け渡し期限が過ぎ、県による強制排除も可能な状況となっているが、「私たちはこれからも闘い抜き、ふるさとを離れるつもりはない。ただちに上告して、判断を正してもらいたい」と力を込めた。
馬奈木昭雄・弁護団長は「高裁の判断は事実誤認で合理性を欠いている。1審判決を上書きしたようで、自分たちの判断はない。極めて不当な判決だ」と批判した。
原告の住民や支援者ら約60人は判決後の集会で、今後も工事現場などでの抗議活動を続けることを誓い合った。【浅野孝仁】