鎌田大地がアーセナルを粉砕、その崩壊の要因とは? 逆転につなげたフランクフルトの変化
by 加藤健一UEFAヨーロッパリーグ・グループF第5節、アーセナル対フランクフルトが現地28日に行われ、1-2でフランクフルトが逆転勝利を収めた。前半に1点を先行されたアウェイチームだったが、後半にMF鎌田大地の2得点で逆転。試合のターニングポイントはフランクフルトがハーフタイムに行った修正にあった。(文:加藤健一)
苦戦する両チームの一戦
UEFAヨーロッパリーグ(EL)・グループFは4節を消化した時点で、アーセナルが勝ち点10で首位に立っていた。スタンダール・リエージュとフランクフルトが勝ち点6で並び、得点数でわずかに前者が上回る。アーセナルは勝てばグループリーグ突破が決まり、フランクフルトにとっては負ければ突破に黄色信号が灯る。そのような状況でこの試合は行われた。
両チームともにチーム状況が芳しくない。アーセナルは5戦未勝利で8位に後退。その相手が良くない。ビッグクラブとの対戦はなく、シェフィールド・ユナイテッド、レスター・シティに敗れ、順位でもその2つのクラブの後塵を拝している。依然としてウナイ・エメリ監督の解任論は途絶えることはない。
フランクフルトも昨季はELベスト4に入ったものの、6戦未勝利でブンデスリーガを終えて、なんとかELプレーオフ出場権を確保するに留まった。今季は既にリーグ戦で5敗を喫して10位。11月の代表ウィークを挟んだ連敗を引きずりながらカップ戦に臨むこととなった。
フランクフルトにとってアウェイは鬼門となっている。リーグ戦ではここまで1勝4敗、ELでもスタンダール・リエージュに敗れている。ホームでは8勝2分2敗と対照的な成績なだけに、エミレーツ・スタジアムで行われたこの試合は苦戦が予想された。
果たして、グループリーグ最大の山場と目された一戦は、アーセナルが前半に先制した。しかし、鎌田大地が後半に2得点を挙げ、フランクフルトが鮮やかな逆転勝利。アーセナルはグループリーグ突破を決められず、フランクフルトは2位に浮上している。
ジャカが復帰、主導権を掴んだアーセナル
アーセナルは直近のサウサンプトン戦から7人を入れ替えた。DFダビド・ルイス、FWピエール=エメリク・オーバメヤンといったコアメンバーは先発に名を連ねる一方で、前線にはブカヨ・サカ、FWガブリエウ・マルチネッリといった若手が起用された。
前日会見で指揮官が「ジャカの復帰は我々にとって重要になるだろう」と話した通り、MFグラニト・ジャカはスタメンに名を連ねた。ダビド・ルイスは最終ラインではなく、ジャカと横に並ぶ形で4-2-1-3の「2」に入った。
試合は前半アディショナルタイムに動いた。右サイドからマルチネッリがグラウンダーでゴール前に入れる。中央でサカは収めることはできなかったが、ファーに流れたボールにオーバメヤンが右足を振り抜く。ボールはGKフレデリク・レノウが弾くも、ボールはクロスバーに当たりながらゴールに収まった。
前半はアーセナルが主導権を握り、8本放ったシュートは5本が枠内を捉えた。フランクフルトはGKレノウの好セーブも飛び出してさらなる失点を許さなかったが、攻撃の形をなかなか作れず、シュートは枠外へと外れた1本のみで前半を終えた。
逆転を呼び込んだハーフタイムの修正
フランクフルトは後半頭から、MFミヤト・ガチノビッチとMFドミニク・コーアを投入。3-4-1-2だった前線の形を変えて、前者は鎌田と2シャドーを形成、後者は退いたジェルソン・フェルナンデスが務めていた「4」の中央に入った。
フランクフルトは相手のセンターバックに対して、シャドーの1人がボランチへのパスコースを切りながら1トップとともにプレスをかける。もう片方のシャドーは相手のボランチをケアし、両ウイングバックは相手サイドバックを監視。アーセナルのビルドアップに蓋をすることに成功した。
フランクフルトの修正は小さなものだったが、微差こそ大差。守備の修正から徐々に攻撃のリズムを掴んでいったフランクフルトは、少ないチャンスをものにした。
右サイドからMFダニー・ダ・コスタのパスを受けた鎌田は、反転からカットインして左足を振り抜く。ミドルシュートはそのままゴールネットに突き刺さり、ヨーロッパリーグ初ゴールでフランクフルトは55分に同点に追いついた。
さらに鎌田は64分に、右CKのこぼれ球を拾うと、ワントラップから再びミドルシュート。右足から放たれたボールはニアサイドを打ち抜き逆転に成功した。
前半は前を向いてボールを受ける機会がほとんどなく、シュートも打てなかった鎌田だったが、後半から入ったガチノビッチとともに前線の守備タスクを遂行しながら、アーセナルの隙を突いた。限られたチャンスの中で2本のシュートをともに決める決定力も見せ、逆転勝利の立役者となった。
運に見放されたアーセナル
3バックの中央でフル出場した長谷部は安定したプレーを見せた。聡明な判断で的確にポジションを取ってクロスボールのターゲットを外さず、素早い対応でオーバメヤンにシュートコースを与えない。ドイツ紙『Kicker』によると、チーム最年長の35歳は対人勝率71%と高い数字を残しながら犯したファールはゼロ。安定したプレーでDFラインに落ち着きを与えた。
アーセナルはフランクフルトの対応によって攻撃の形を見失った。メスト・エジルを投入して右サイドに入れたが、改善は見られず。後半記録したシュートは、立ち上がりに放った1本のみだった。
運にも見放された。接触プレーで胸を強打したダビド・ルイスは前半31分にMFマテオ・ゲンドゥジと交代。ポジションも髪型も同じだが、背番号が23から29に変わった。
さらに後半にはDFストラゴン・ムスタフィが負傷。DFをベンチに入れていなかったアーセナルはMFルーカス・トレイラをピッチに入れ、ジャカをDFラインに組み込んで急場を凌いだ。交代枠2つを負傷で使ってしまい、FWニコラ・ペペ、FWアレクサンドレ・ラカゼットといったアタッカー陣を投入することはできず、反撃のきっかけを掴むことはできなかった。
前日会見で自身の今後について聞かれたウナイ・エメリはこう答えている。
「私の未来は今日と明日だ」
果たしてアーセナルとエメリの未来は……。
(文:加藤健一)
【了】