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ヤクルト・村上【拡大】

【小早川毅彦のベースボールカルテ】セ新人王のヤクルト・村上、課題の守備より長所を伸ばし打撃で突き抜けてほしい

 ヤクルト・村上がセ・リーグの新人王に選ばれた。高卒2年目で、いずれもリーグ3位の36本塁打、96打点は立派。数字以上にすごいところは、レギュラーシーズン(143試合)だけでなく、キャンプの紅白戦から全試合に出場したことだ。

 来季に向けては、15失策(一塁手で5、三塁手で10)を数えた守備が課題という人もいる。一塁守備はまず、ゴロのタイミングに合わせること。苦手な人は力が入って体が固まるので、うまく捕球できなくなる。あとはスローイングだ。

 オフから課題の克服に取り組むだろうし、来春のキャンプでも多くの時間が割かれるだろうが、私は打つ方に時間と労力をつぎ込んでほしいと思っている。練習の7、8割が打撃でもいい。

 チームの先輩であるバレンティンも、お世辞にも守備がうまいとはいえない。しかし、2013年に60本塁打を放ってシーズン最多本塁打のプロ野球記録を更新した際、守備を問題視する人がいただろうか。守備を軽視しろというのではない。村上の長所は持って生まれた打球の飛距離と、下半身の強さ。長所を伸ばして、打撃で突き抜けてほしいのだ。

 本来は試合に出場し続けているとシーズンは長く、逆に故障で出られないと焦りで早く感じる。今年は無我夢中でプレーして、あっという間に終わっただろうが、目に見えない疲労が残っている来年は、一年が長く感じられるだろう。

 打率は規定打席に達した30人の中で最下位の・231だったが、来季は相手が勝手に意識してくれるようになり、率は自然に上がると思う。そうなればリーグ最多だった三振(184)も減る。私の経験では、打率が低いと本塁打の数は伸びないもので、今季の村上は不思議な存在だった。

 来季はタイトルが狙える40本塁打、100打点を期待したいが、数字を追い求めることより、まず試合に出場し続けることを目指してほしい。スケールの大きな選手に育つには、そちらの方が大事だ。そして、小川前監督が願っていた「誰からも愛される選手」になってほしい。それが調子が悪い時も我慢して使ってくれた前監督への恩返しだ。 (サンケイスポーツ専属評論家)